株主還元:配当を誰が決めるか
配当の「額」を求める提案は、ほとんど支持を集めません。一方で、配当を株主総会でも決められるようにする「決定機関」の定款変更は、2025年に可決例が出て、2026年も高い支持を得ています。株主が問うているのは金額そのものより、還元方針を説明し、株主の意思が届く仕組みがあるかです。
2026年10月19日作成。出典は2026年10月24日に再確認しました。賛成率などの数値は臨時報告書・会社の開示によります。
実際に出ている問い
会社法では配当の決定は株主総会が原則なのに、定款で総会での決議を排除している。そうした会社は全体の8分の1にすぎない。取締役会と総会の双方で決められるようにすべきだ。
栄研化学(4549)2025年 株主提案の提案理由(AVI Japan Opportunity Trust)の要約。
剰余金の配当等の決定機関を取締役会に限る定款は、株主の権利を制限している。株主からの提案があれば総会でも決められるよう改めるべきだ。
ステラ ケミファ(4109)2025年 株主提案の提案理由(Nippon Active Value Fund)の要約。
配当性向が15.9%しかない。1株500円に引き上げるべきだ。
三井金属(5706)2026年 株主提案の提案理由(ヒデショウ)の要約。
回答に含めるべき要素
- 還元方針を数字で:配当性向・総還元性向・DOE・配当下限のどれを、なぜ使うのか。F7S1
- 実績:過去数期の配当、自己株式取得、総還元性向。
- キャッシュアロケーションとの関係:成長投資、手元資金、借入とあわせた配分。S1
- 決定機関の理由:取締役会に決定権を置くなら、取締役会の独立性と、株主の意見を還元方針に反映する仕組み。
- 提案の規模を採らない理由:提案額を利益や手元資金と比べた数字。
- 英文で:方針、取締役会意見、議決権行使結果。R3G6
事例:栄研化学(4549)2025年 可決
Japan IR Index の調査対象外の会社です。英文開示の評価はありません。
- 提案株主
- AVI Japan Opportunity Trust
- 提案
- 配当の決定機関の定款変更、自己株式取得
- 結果
- 定款変更は可決(73.11%)
| 2025年6月24日 第87期総会 株主提案 | 賛成率 |
|---|---|
| 配当の決定を総会でも可能にする定款変更(3分の2が必要) | 73.11% 可決 |
| 自己株式取得(170万株・30億円以内) | 37.66% 否決 |
取締役会は、指名委員会等設置会社で取締役8名中5名が独立社外取締役であること、2026年3月期から総還元性向50%以上を目安とすること、上限50億円の自己株式取得を実施中であることを理由に反対しました。
回答が答えた点
- 還元方針(総還元性向50%以上)と実施中の自己株式取得を数字で示した。株主は追加の自己株式取得(37.66%)には賛成しなかった。
答えていない点
- 独立性の高い取締役会であっても、総会での決議を「排除する」理由は株主に受け入れられなかった。問われたのは還元の額ではなく、株主の決定権を残すかどうかだった。
事例:ステラ ケミファ(4109)2025年
同じ定款変更の提案は賛成47.22%で、可決に必要な3分の2に届きませんでした。取締役会は、総還元性向100%超の実績(2024年3月期101.5%、2025年3月期107.0%)と、年間配当170円の下限を新たに示して反対しました。前提議案の否決で、約10%の自己株式取得の議案は付議されていません。論点02で詳述 →
対照:三井金属(5706)2026年 金額の提案
配当を1株500円に引き上げる提案(当時の配当は240円、配当性向15.9%と提案理由に記載)は、賛成1.77%で否決されました。同じ総会で、同じ株主による役員報酬の個別開示の提案は43.10%を集めています(論点06)。
配当の「額」を指定する提案は、決定の仕組みを問う提案とは支持のされ方が大きく異なります。三井金属は英文の招集通知を29日前に掲載していますが(G5 = 5)、議決権行使結果の英文は可否のみで賛否の数がありません(G6 = 2)。
出典
- 当社定時株主総会に係る株主提案書面の受領及び当社取締役会意見に関するお知らせ
- 臨時報告書(第87期定時株主総会の議決権行使結果)
- 株主提案書面の受領および当社取締役会意見に関するお知らせ
- 臨時報告書(第82期定時株主総会の議決権行使結果)
- 第101期定時株主総会招集ご通知(株主提案と取締役会意見 pp.31–33)
- 臨時報告書(第101期定時株主総会の議決権行使結果)
- Japan IR Index 調査記録:4109、5706(2026年10月)