政策保有株式の縮減
「なぜ保有し続けるのか、いつまでにどこまで減らすのか」。政策保有株式は、株主提案だけでなく議決権行使基準でも問われ続けています。答えの形はすでに見えていて、英文で十分に答えている会社もあります。問いと、答えた会社・答えていない会社を並べます。
2026年10月19日作成。出典は2026年10月24日に再確認しました。賛成率などの数値は臨時報告書・会社の開示によります。
実際に出ている問い
政策保有株式は時価総額の46%に相当する。こうしたガバナンスの欠陥が、大きく割安な株価に表れている。
東洋製罐グループホールディングス(5901)2021年、オアシス・マネジメントの公表声明の要約。
政策保有株式を解消し、不動産事業を切り出すべきだ。
フジ・メディア・ホールディングス(4676)2025年、NIPPON ACTIVE VALUE FUNDの株主提案の理由の要約(会社の取締役会意見〈2025年5月16日〉に原文のまま記載)。報道ではダルトン・インベストメンツの運動とされています。
上場子会社のPBR1倍割れが常態化し、子会社化時に企図したシナジーは6年たっても具現化していない。保有方針を社外取締役で検討し、毎年株主に説明すべきだ。
ADEKA(4401)2025年 株主提案の提案理由(シティインデックスイレブンス)の要約。対象は上場子会社の日本農薬。
回答に含めるべき要素
Japan IR Index の評価項目G7(政策保有株式:縮減計画と保有理由)は、次の要素がすべて英文で揃っているときに5点です。
- 方針:原則として保有しない、または縮減する。例外として保有する場合の理由。G7
- 残高:銘柄数と金額、純資産(自己資本)に対する比率、上場・非上場の別、複数年の推移。G7
- 縮減目標と期限:「純資産の○%未満」「ゼロ」などの数字と年度。G7
- 毎年の検証:資本コストと比べた検証の方法と、その年の結果(売却・一部売却・継続)。G7
- 売却資金の使い道:キャッシュアロケーションのどこに入るか。S1
- 議決権行使の基準:保有株式の議決権をどう行使するか。
- 英文で:方針と数字が日本語のコーポレート・ガバナンス報告書や有価証券報告書の中だけにない。G1G7
事例:フジ・メディア・ホールディングス(4676)2025年
- 提案株主
- NIPPON ACTIVE VALUE FUND(ダルトン系と報道)
- 提案
- 取締役候補12名
- 結果
- 12名全員否決(10.43〜27.00%)
提案は取締役の選任ですが、背景にある要求の一つが政策保有株式の解消でした。会社は提案の前に公表した「改革アクションプラン」(2025年5月16日)で、次の数字を示しています。
- 政策保有株式を3年以内に1,000億円超売却し、2027年度末までに純資産の15%未満とし、さらに縮減する。
- 2025年3月期の縮減実績は70億円。
- 売却資金は、成長投資(5年間で2,500億円規模)と自己株式取得(2029年度までに1,000億円超)の原資として、キャッシュアロケーションに位置づけ。
回答が答えた点
- 縮減目標を「純資産比」と「期限」で示し、売却額と資金の使い道を一枚の配分図に載せた。
答えていない点
- 銘柄ごとの保有理由と、資本コストに照らした検証結果は、この資料では示されていない。
- 2026年9月時点で、政策保有株式・コーポレート・ガバナンス報告書・招集通知・議決権行使結果のいずれも英文が見当たらない(G7・G1・G5・G6 = 該当なし)。
事例:東洋製罐グループホールディングス(5901)
2021年のオアシスの提案は、政策保有株式が時価総額の46%に相当することを問題にしました。提案議案は自己株式取得(賛成18.58%)や相談役の廃止(26.75%)などで、すべて否決されています(論点02)。
2026年5月の英文の「中期経営計画2030」には、前計画期間(2021〜2025年度)の資金の出し入れとして、「資産売却・資金調達」1,329億円の中に政策保有株式の売却が記載されています。
回答が答えた点
- 政策保有株式の売却を、キャッシュアロケーションの資金源として示した。
答えていない点
- 計画資料に、政策保有株式の残高、純資産比、縮減目標、期限のいずれも見当たらない。2021年に問われた「時価総額の46%」がいまどうなったかは、英文の計画からは読めない。
- 売却額は資金調達と合算されており、売却の金額そのものが分からない。
事例:ADEKA(4401)2025年 上場子会社の保有
- 提案株主
- シティインデックスイレブンス
- 提案
- 上場子会社の保有方針を検討する特別委員会の設置(定款)
- 結果
- 否決(賛成3.74%)
取締役会は、取締役の半数が独立社外取締役である取締役会で上場子会社の保有方針を継続して議論していること、方針はコーポレート・ガバナンス報告書で開示していることを理由に反対しました。社長の再任賛成率は98.14%です。
回答が答えた点
- 英文のコーポレート・ガバナンス報告書(2026年7月10日、最新版、G1 = 5)に、政策保有株式の保有理由、資本コスト等に照らした毎年の検証、その年の売却(13銘柄)を記載(G7 = 3)。
答えていない点
- 政策保有株式の縮減目標と期限が英文で示されていない(G7が3にとどまる理由)。
- 提案の核心だった上場子会社(日本農薬)の保有方針について、売却・完全子会社化・維持のどれを選ぶかは示していない。
賛成率3.74%は、定款で特別委員会を義務づけるという提案の形式への評価も含みます。保有方針そのものへの支持の低さとは読めません。
英文の開示例
次の会社は、上の要素を英文で揃えています(G7 = 5、2026年10月調査)。問われる前に答えておく形です。
日本精工(6471)
目標:3年でゼロ
英文の招集通知(p.19)に、方針(原則保有しない)、資本コストに照らした毎年の検証、2010年3月の136銘柄(上場79)から2026年3月の42銘柄(上場12)への推移、自己資本比4.7%→3.5%、MTP2028期間中にゼロとする目標、議決権行使基準。
ジェイテクト(6473)
上場株77銘柄からゼロへ
英文のガバナンスページで、第2次中計期間中に上場の政策保有株式を「ゼロ」とする方針と、前年度末13銘柄のうち3銘柄全売却・6銘柄一部売却の進捗。英文の決算説明資料に、2019年度の77銘柄からの推移と純資産比を図示し、売却資金をキャッシュアロケーションに計上。
荏原製作所(6361)
上場株は保有なし
英文の専用ページで、方針、検証基準、議決権行使基準、相手先が売却を望めば当社株の売却に応じるとの方針、2021〜2025年末の5年間の銘柄数(32→11、上場株はいずれの年もゼロ)を開示。
出典
- Oasis Statement on Shareholder Proposals for a Governance Turnaround at Toyo Seikan
- Formulation of Medium-Term Management Plan 2030
- 株主提案に関する書面受領について
- 2025年3月期 決算説明資料(改革アクションプラン、pp.42–43)
- 株主提案に対する当社取締役会意見に関するお知らせ
- Fuji Media Shareholders Spurn Activist-Backed Board Members
- 株主提案に対する当社取締役会の意見に関するお知らせ
- 臨時報告書(第163回定時株主総会の議決権行使結果)
- Notice of the 165th Ordinary General Meeting of Shareholders, p.19
- Corporate Governance
- Cross-Shareholdings
- Japan IR Index 調査記録:4401、4676、5901、6361、6471、6473(2026年9〜10月)