情報開示の拡充
株主提案の理由には、「会社は何も開示していない」という指摘がよく含まれます。顧客がすでに公表している自社製品の用途、時価で見た資産、そして英文の開示です。開示を定款で義務づける提案はほとんど否決されますが、問いそのものは残ります。
2026年10月19日作成。出典は2026年10月24日に再確認しました。賛成率などの数値は臨時報告書・会社の開示によります。
実際に出ている問い
当社製品が生成AI向けのデータセンターや最先端のサーバに搭載されていると顧客が公表しているのに、会社は何も開示していない。
山洋電気(6516)2026年 株主提案の提案理由(ストラテジックキャピタル)の要約。
賃貸不動産の含み益が自己資本を上回る場合は、含み益を加味した純資産やROEを開示すべきだ。
石井鐵工所(6362)2024年 株主提案(VASANTA MASTER FUND、定款変更)の要約。
回答に含めるべき要素
- 成長分野の売上と顧客:守秘の範囲で、用途別・市場別の売上や受注。F5S4
- 事業別の利益と資本:セグメント利益、ROIC。F5
- 投資家が使う指標:資本コスト、時価で見た資産。出さないなら理由。
- 開示の場所と時期:中計、決算説明会、統合報告書のどこで、いつ。S2
- 英文で同じ日に:決算短信、説明資料、ガバナンス報告書、招集通知、議決権行使結果。F1R1G6
事例:山洋電気(6516)2026年
取締役会意見(5月18日)は、AI・データセンター需要の拡大に触れたものの、製品の搭載先を開示していないという指摘には直接答えていません。2日後の第10次中期経営計画(5月20日)は、AIサーバの冷却に使われるリアドア空調機向けの低消費電力ファン、液冷市場向け製品の拡充、AI市場での新規顧客の拡大を、成長施策として示しました。中計は英文でも同日に公表されています(S1 = 5)。提案は翌日に取り下げられました。
回答が答えた点
- 指摘された用途(AIサーバの冷却)を、製品と施策の形で中計に載せた。
答えていない点
- AI・データセンター向けの売上や受注の規模は示されていない。
事例:石井鐵工所(6362)2024年
含み益を加味した指標の開示を定款で義務づける提案は、賛成20.03%で否決されました。取締役会は、開示の充実は常に実施しているとしたうえで、詳細な開示事項を定款に定めると開示の柔軟性を欠くと反対しました。総会から4か月後に、同社は非公開化の手続に入っています。論点11 →
英文で届いているか:このシリーズの事例から
このシリーズで取り上げた会社の、回答が英文で読めるかどうかを、Japan IR Index の調査記録(2026年9〜10月)から並べます。
| 会社 | 英文で読めないもの |
|---|---|
| フジ・メディアHD(4676) | ガバナンス報告書、招集通知、議決権行使結果、政策保有株式(G1・G5・G6・G7) |
| 東洋製罐GHD(5901) | 決算短信は表紙のみ(F1 = 2)、議決権行使結果(G6) |
| ステラ ケミファ(4109) | 有価証券報告書(F4)、ガバナンス報告書(G1)、政策保有株式(G7) |
| 三井金属(5706) | 議決権行使結果の賛否の数(G6 = 2) |
| 太陽HD(4626) | 議決権行使結果の賛否の数(G6 = 2) |
| サンテック(6777) | 決算説明資料(S2)、中期経営計画(S1) |
一方、山洋電気、ステラ ケミファ、ミネベアミツミ、レゾナック、ADEKA は、株主提案への意見書や中計を含む適時開示を英文で同日に出しています(R3 = 5)。ステラ ケミファは議決権行使結果も賛否の数まで英文で出しています(G6 = 5)。
このシリーズの提案株主には、海外のファンド(AVI、Nippon Active Value Fund、Oasis、VASANTA など)が多く含まれます。回答が日本語でしか読めなければ、問いを出した側に答えが届きません。
出典
- 株主提案に対する当社取締役会の意見に関するお知らせ
- 第10次中期経営計画策定に関するお知らせ
- 当社定時株主総会に係る株主提案に対する当社取締役会の反対意見に関するお知らせ
- 臨時報告書(第158期定時株主総会の議決権行使結果)
- Japan IR Index 調査記録:4004、4109、4401、4626、4676、5706、5901、6479、6516、6777(2026年9〜10月)