気候変動の開示
気候変動の株主提案は、主に海外のNGOや年金基金から、銀行・商社・電力会社に出されています。問われているのは目標の有無ではなく、目標に向けた移行計画と、それを取締役会が監督できるかです。賛成率は年によって大きく動きます。
2026年10月19日作成。出典は2026年10月24日に再確認しました。賛成率などの数値は臨時報告書・会社の開示によります。
実際に出ている問い
取締役会が気候関連のリスクと機会を監督できる能力を持っているか、株主には判断できない。取締役の能力を開示すべきだ。
三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)2024年 株主提案(Market Forces など環境団体、集計資料による)の提案理由の要約。
化石燃料関連の融資先の移行計画が1.5℃目標と整合しているかをどう評価するのか、整合しない場合にどうするのかを開示すべきだ。
同 2024年の第2の提案の要約。2025年にも同趣旨の提案が出されている。
回答に含めるべき要素
Japan IR Index の34項目は気候変動を直接評価していません。関連する項目のみ記号で示します。
- 移行計画:中間目標、対象範囲、進捗。
- 評価の方法:取引先や事業の移行状況をどう評価し、整合しない場合にどう対応するか(エスカレーション)。
- 取締役会の監督:担当する委員会、取締役のスキル。G3
- 定款に書かない理由:反対するなら、代わりにどこで何を開示しているか。
- 英文で同じ日に:取締役会意見、気候関連の報告書、議決権行使結果。S6G6
事例:三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)2024〜2025年
Japan IR Index の調査対象外の会社です。
| 気候関連の株主提案(定款変更、3分の2が必要) | 賛成率 |
|---|---|
| 2024年 気候関連リスク・機会の管理に必要な取締役の能力 | 25.79% |
| 2024年 顧客の移行計画の評価 | 18.38% |
| 2025年 顧客の移行計画の評価の開示 | 8.94% |
| 2025年 監査役会による財務リスク監査の開示 | 6.80% |
取締役会は2024年5月の意見書(英文あり)で反対しました。移行計画の評価については、公開情報と対話で得た非公開情報に基づく評価の枠組みで1.5℃目標との整合を確認していること、信頼できる移行計画を示さない顧客には与信条件の見直しを検討するエスカレーションの手続があることを説明し、GFANZの指針に基づく移行計画を含む気候関連の報告書を参照先として示しました。定款は会社の基本的事項を定めるもので、個別の方針を記載するのは適切でないとも述べています。
2024年の取締役の能力に関する提案には、議決権行使助言会社のISSが賛成を推奨しており、会社は6月11日に英文でこれに対する見解を公表しています。
回答が答えた点
- 提案が求めた「評価の方法」と「整合しない場合の対応」に、それぞれ具体的に答え、参照先の報告書を示した。
- 意見書、ISSへの見解、議決権行使結果(臨時報告書の英訳、賛否の数つき)をすべて英文で公表。
答えていない点
- エスカレーションで与信条件を見直した件数や金額など、手続が実際に使われたかを示す数字はこの意見書にはない。
2024年から2025年に賛成率が大きく下がった理由は、公表資料からは特定できません。提案の内容の違いや、議決権行使助言会社の推奨の有無も影響している可能性があります。
参考:東洋製罐グループホールディングス(5901)2021年
オアシスの5議案の一つ、「TCFDを踏まえた経営戦略を記載した計画の開示」の定款変更は、賛成14.31%で否決されました。同年の議案の中では、相談役廃止(26.75%)、自己株式取得(18.58%)に次ぐ支持です。論点02 →